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リーダーシップの第一人者が語る、日本と世界のリーダーの差とは?

November 24, 2020
リーダーシップ開発の第一人者でもある丸山氏は、これまで多くの大手日本企業の社長や社長後継者候補に対するコーチング、そして経営チーム・組織変革などのコンサルティングを手掛けられ、その経験から今回、昨今のビジネストレンドにおいて 多くの日本企業が抱える潜在的な課題提起や次世代を担う人材課題、グローバル企業の経営メンバーとしてリーダーシップを発揮する立場についたことによって見えた世界、その醍醐味とやりがい、また、日々現実に直面する課題や苦悩、そして、それらをどのように突破しているのか など様々な体験談を伺いました。〈聞き手=佐伯玲奈〉
photo: yasushi_maruyama

丸山泰史 - Yasushi Maruyama

エゴンゼンダー東京オフィス代表Global Executive Committee Member (People担当)
世界最先端のリーダーシップ開発の知見・手法を習得・活用。日本の良さ・強みを活かしながら、大手日本企業の社長、社長後継候補へのコーチング、経営チーム・組織変革コンサルティングを提供。マッキンゼー東京オフィス、フランクフルトオフィスにて活躍。日本の中高・大学生に向けた定期的なキャリア教育セミナーや講義の提供、エゴンゼンダーの知見・専門性を活かした種々の社会貢献活動にも携わる。東京大学 理学部卒業、東京大学大学院 情報理工学修士・INSEAD修了(MBA with Distinction 取得)・Certified Immunity To Change Coach・Fellow, Institute of Coaching

Table of Contents:

  • エゴンゼンダーでの仕事内容について
  • 仕事のやりがいについて
  • リーダーシップのプロが語るリーダー論
  • 日本のリーダーと世界のリーダーの違い
  • リーダーに必要とされる4つの特徴
  • グローバルレベルのリーダーシップを身につける方法
  • 日本の教育について
  • 組織の規模によるリーダーシップの違い
  • 日本人は本当に勉強しなければならない - 日本型リーダーシップが招いた日本デジタル後進国化
  • ※ 本記事は、英語インタビューの内容を元に、日本語にて読みやすく編集した内容となります。
    元の英語インタビューは、ページ上部の動画を再生してご覧ください。

エゴンゼンダーでの仕事内容について

- エゴンゼンダーでの仕事内容についておしてください。

まず初めに、このような機会をいただきありがとうございます。
エゴンゼンダーについてご存知ない方も多いかと思いますが、簡単に言えば、 国際的に活動している経営コンサルティング会社ということになります。
元々スイスからスタートしたファームで、 弊社ではエグゼクティブレベルのコンサルティングを数多く実施しており、 内容についてはリーダーシップに関するものが多いですね。
例えば、もしある会社内のメンバーに有力な候補がいない場合など、 その会社の外部から代表取締役として、その企業での業務を行ってもらうということをしています。
他にももしチームワークの面で問題があったとしたら、そのチームの効率を上げるためのサポートをしていきます。
もし、現職のCEOが何か問題を抱えているとしたら、彼らにコーチングなどを実施し、問題を解決していきます。
つまり、グローバルレベルでリーダーシップに関する様々なソリューションを提供することが エゴンゼンダーで私たちが行っている主な仕事です。

- つまり、リーダーシップをサポートする仕事を通じて日本や世界の未来を切り開いているのですね!

そう言っていただけるとありがたいですが(笑) 担当しているCEOやリーダーたちがそのような未来を作っていただけると信じてサポートしています。

- そして執行役員として、グローバルレベルでの企業全体の問題にも取り組んでいらっしゃるとお聞きしました。

エゴンゼンダーは世界40カ国に60のオフィスがあり、2000-3000人のスタッフが日々そこで働いています。
その国のリーダーシップを支えることで、その土地の社会にも良い貢献ができていると思います。
なので、執行役員としてこのような意義のある仕事に取り組めていることに誇りを持ちながら、日々仕事を頑張っていますね。

仕事のやりがいについて

- そのような役割で仕事をしていて、何にワクワクしたり、やりがいを感じているのでしょうか?

グローバル環境で仕事をしていて、毎日同僚にインスパイアされていますね。
彼らは非常に強い信念と情熱を持って、 世界中のリーダーのサポートをしており、 その一人一人が個性的で、ユニークな技術を持っています。
なので、自分自身のモチベーションを高める必要はなく、 そのような環境に置かれて常にインスパイアをされているので、自動的にモチベーションが高くなっている感じがします。
そういった点で、非常に恵まれていると日々感じていますね。

- 日本での環境とグローバル環境で受ける影響の違いなどはありますか?

日本のリーダーからも多くインスパイアを受けるので、そこに関して違いはありませんが、大きな違いとなると多様性でしょうか。
世界の様々な国では、それぞれの個性があり、そういった文化的側面は非常に興味が湧いてきます。
そして、そのような多様性の中で合意に至るのは簡単ではありませんが、その違いを楽しめるようになれば、これほど嬉しいことはありません。

- 現状、グローバルマネージメントにおいて、何か課題に感じているとはありますか?

英語でのコミュニケーションは未だに苦労しています。
24-25歳くらいまで、一度も海外にでて英語と接する機会がなかったので、そこにおいて、英語でのコミュニケーションには苦労しています。
執行役員として仕事をしている上で、特に今年は人事評価の問題が世界中で一斉に起こったように思います。 新型コロナ感染症の問題やBlack Lives Matterの問題などについて全ての会社が向き合わなければなりませんが、 どの会社もどう対処したら良いかわからず、 私自身もまだそれらの問題に関して深い知識があるとは言えない状態なので、毎日学んでいる状態です。
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リーダーシップのプロが語るリーダー論

- 今までにたくさんのリーダーと出会い、仕事をされてきたと思いますが、どのようなリーダーが今のような問題が発生した時にしっかりと対処できて、このような状況を生き抜いていけるのでしょうか?

難しい質問ですね、ちなみに私もその答えを探しているうちの一人です(笑)。
特にこのような時代に突入して、誰もが正解がわかっていない状態ですので、模索を続けることが大切なのではないでしょうか。
むしろ、「答えがある」と思ってしまうことの方が非常に危険だと思います。
そこにおいてリーダーがすべきことは、 好奇心を持ち続け、アンテナをしっかりと広げて、 外で何が起こっているのかを常にモニタリングし続け、 そこからフィードバックを受けて、調整するということです。
それが、リーダーが今、最優先でしなければならないことでしょう。

- 確かにおっしゃる通りですね。ただ、そうなるとリーダーとしても不安が絶えない状況になってしまうかと思います。今そのように不安を抱えているリーダーに何かアドバイスはありますか?

正直、私自身、毎日、不安と格闘していますよ(笑)。
ただ、不安に思う気持ちというものは悪いものではないと思います。
そしてむしろ、リーダーにとって必要なものとも言えます。
それが新たなものを生み出すパワーになりますからね。
なので、それを楽しんで、そこから学ぶことが大切なのではないでしょうか。

日本のリーダーと世界のリーダーの違い

- 素晴らしい考え方ですね。実際に上で述べられたような取り組みをされている日本人のリーダーにお会いしたことはありますか?

そうですね。今まで日本で素晴らしいリーダーにたくさん出会いました。 彼らは心配や不安を力に変えたり、コントロールできる人たちだったと思います。
ただ、それについて思うのがそういった感情のコントロールというのはすでに日本の文化の中に組み込まれており、 日本人は特にそれを誰かから学ぶ必要もなく習得できている人が非常に多いと思います。
一方で日本のリーダーは国際社会の中でプレゼンスを出していくことに困難を感じている人も多いと思います。 そこには、英語でのコミュニケーションスキルだったりということもありますが、もちろんそれだけではありません。
また、日本のリーダーの中にはまだグローバル環境における経験が十分にない人もたくさんいらっしゃいます。
これについては、国全体として国際的に繋がっていく、働きかけていく必要がまだまだあるのではないでしょうか。

- とても素晴らしい意見をありがとうございます。先ほど日本人の感情のコントロールの上手さについてご指摘いただきましたが、それは単純に文化的なものでしょうか?また、感情をコントロールしているか隠しているかの違いについてはどうでしょうか?

そうですね、例えば、最近の話題として新型コロナウイルス感染症が世界で猛威を振るっていますが、 それに対する各国の反応を見てみると、他の国は、暴動が起きて、より混乱しているように思いますが、 日本の反応は非常に静かで、しっかりと対応しているように思います。
もしかしたら感情を隠しているということにもなるのかもしれませんが、 コントロールしようとしてそうなっているというよりは、自然とそうなっている感じがしますね。

- そのような日本人の反応というのはリーダーにとって有利に働くのでしょうか?

メリットとデメリットの両方があるでしょう。
リーダーとして、それを積極的にコントロールできるならば、それは大きな強みになります。
ただ、やはり感情をコントロールしているのではなく、むしろ感情にコントロールされているとしたら、それはむしろ弱みになるはずです。

- そのように、感情のコントロールだったり、表現だったり、そのまわりに関して、非常に素晴らしいスキルをお持ちだと、拝見させていただき感じていますが、そのようなご自身のスタイルはどのように形成されていったのでしょうか?

3-4年前にエゴンゼンダーでその辺りのトレーニングを積んでいましたが、 そこで「もっとしっかり表現しましょう」というフィードバックをいただきました。
その前までは、感情を表現することが下手だったのですが、そこでこのような表現することについて鍛えられた面はあると思います。。 その後は、自分自身で日々、研鑽を積んでいます。

- では、日本のリーダーシップというのは、今後どう改善されるべきでしょうか?

日本企業やそこにいるリーダーというのは素晴らしく、実効性があることはもちろん、リーダーが育つ環境がそこにあります。
しかし、日本の企業が直面している問題もあります。 特に日本の場合は「CEOにおけるリーダーシップ」というものが理解できていないように思います。
CEOにおけるリーダーシップは他のポジションのリーダーシップとは違います。
CEOというのは、組織のトップとなり、その上にもはや上司がいない状態なので、ここが他のポジションと大きく異なる点です。
また、日本企業の文化として年功序列がありますが、そのせいで若い世代が企業のトップになることも本当に稀です。
国際企業では才能ある20-30代にそういったチャンスが与えられるようになっています。
しかし、日本では若い世代にチャンスが回ってきませんので、そういった有能な人材はスタートアップなどの企業に流出してしまいます。
日本には「分を弁える」といった言葉があります。
このような考え方は日本にいれば自然に養えるものですが、こうした考え方が本当に成長を阻害してしまいます。
もちろんそれが完全に悪いわけではありませんが、それがために、ポテンシャルをフルに活用できない人が本当に多いと思います。

- フランスやドイツなどでもアメリカやイギリスに比べてトップダウン的な組織運営がされがちかと思いますが、そういったことは感じられたことはありますが?

それに関しては、そこまで多くのケースを扱っていないのですが、 あるヨーロッパのリーダーを担当した時に感じたことは、 そういったことは世界各国で共通の問題でもあるということです。
日本ではそれが特に顕著というだけで、アメリカだろうとイギリスだろうと、他のどの国でも似たような問題は起きています
なので結局、我々は同じ人間なのだと気付かされますね。
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リーダーに必要とされる4つの特徴

- 誰がポテンシャルを持っているかどうかについての見分け方はありますか?

私の考えでは、全ての人間がそれぞれのポテンシャルを持っていると思います。
しかし、先ほど私がお話ししたポテンシャルに関しては少し違い、CEOやリーダーになるポテンシャルです。
これに関しては、特有の個性や特徴があると考えられています。
会社が行ったリサーチで、世界500人のCEOにアンケートをとり、CEOになるために必要な要素を抽出しました。
そして、そこには4つの要素があるとわかりました。
1つ目はCuriosity - 好奇心
2つ目はInsight - 洞察力
3つ目はEngagement - 影響力
4つ目はDetermination - 胆力です
以上の4つの項目で弊社としてはリーダーの評価をしています。

- この4つの中で成長させるのが難しいのはどれでしょうか?

実は、誰でもこの4つのスキルを解放させることは可能ですが、その中でも洞察力に関しては難しいかもしれません。 ただ、今まで担当してきたリーダーの中でそれらをフルに活用できていなかった人もたくさん見てきましたが、 それらを成長させることは自体は可能です。

グローバルレベルのリーダーシップを身につける方法

- グローバルレベルでのリーダーシップを身につけるために、何かアドバイスなどいただけますでしょうか?

そうですね。まず最初に言いたいことは、「誰もが自分が思っているよりも実際はもっと優れている」ということです。
なので、アドバイスとしてはまず、自分のポテンシャルを信じることです。
その後で、他者のポテンシャルに関しても信じてあげなくてはなりませんね。
なので、自分は自分が思っているよりも優れているし、 他者もその人が思っているよりも優れているということを理解した方がいいということがアドバイスになります。

- こちらまで元気にさせてくれるような素晴らしいお言葉ありがとうございます。では、そのように理解させるには具体的にどう進めていけばいいのでしょうか?

そうですね、それぞれが知っているだけでなくて、それを実感しなければいけませんね。
となるのは、小さなステップを積み重ねることです。
大きく変えてしまうことは、常に危険を伴います。
もし、何かがうまくいっていないと感じたら、少しだけ何かを変えて前進してみようとしてください。 そのような変化を通じて、ご自身の中でものの見方や感じ方が少しだけ変わるはずです。

日本の教育について

- リスナーから質問をいただいております。もし現在の日本の学校のカリキュラムに何か一教科新しく加えるとしたら、どんなものを取り入れるべきでしょうか?

とてもいい質問ですね!確かに、日本のリーダーや、日本自体をより良いものに変えていくには教育は欠かせません
質問には直接お答えしていないかもしれませんが、教師をサポートするプログラムは作った方がいいと思います。
教師の方々は素晴らしい方ばかりで、私も尊敬の念を抱いていますが、先生方もまた、現場で多くの困難に直面していると聞きます。
例えば、教師の方々は世界に羽ばたくリーダーを教育したいと思っていらっしゃいますが、 では、実際にどうしたらいいのかということはわかっていないと思います。
教科を一つ追加するというのも悪くはありませんが、 「教師をサポートする」ということが今、最もやらなくてはならないことなのではないでしょうか?

組織の規模によるリーダーシップの違い

- 大きな企業の代表取締役から小さな会社の社長にキャリアを移る際に、気をつけるべきポイントはありますか?

まず、そのような決断をされた勇気に拍手を送りたいですね。
その上で、アドバイスを送るとすると、恐らく、その二つの企業文化は大きく違います
そして、その影響の大きさを低く見積もってしまいがちですが、それは大きな間違いです。
また、そのようなケースでは、非常に大規模に経営を行なってきた、 以前の会社のやり方があらゆる点において正しいという考えになりがちですが、 それは本当に危険です。
そのような考え方でいると、必ず、その小さな企業内で軋轢が生まれてしまうでしょう。
なので、そのようなケースでは、まず2社の違いを認識して、どちらのやり方が良いのか冷静に判断する必要があります。
結論としては、小さな会社にきた時は一度思考回路をリセットして、その会社の良いところを見つけるところから始めなければなりません。

- 前の企業のことを全く忘れるわけではなく、そのバランスが重要ということはありますか?

そうですね、確かにバランスは重要ですが、正直、前の企業のやり方は全く、受け継いでやるべきではないでしょう。
前の企業でしてきたやり方はナレッジとして自分の中に蓄積し、 実際に新しい会社での経営に関しては、1からやり直すつもりで取り掛からないといけません。
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日本人は本当に勉強しなければならない - 日本型リーダーシップが招いた日本デジタル後進国化

- 日本において特定の業界で国際的なリーダーが足りていないと感じる分野はありますか?

デジタル分野ですね。
その分野でのリーダーは足りていませんし、いろいろなジャンルの企業と接した経験から、 実際に日本企業はデジタルトランスフォーメーションが本当に今後の鍵になっていると感じています。
最近マッキンゼーが実施した調査レポートを読んだのですが、新型コロナ感染症に対してのデジタル活用についてのものでした。
先進国20-30カ国が表にマッピングされていたのですが、明らかに目を引くのが日本で、本当にグラフが「空洞」だったのです。
このことからもわかるように、日本は本当にデジタルトランスフォーメーションに関して遅れていると明確になりましたね。

- 日本は昔から「ハイテク」「技術力が高い」と言われてきましたが、なぜこのような結果になってしまったのでしょうか?

これは、今回のテーマに当てはまるのですが、 日本の問題は「デジラルトランスフォーメーションにおけるリーダーシップの欠如」にあります。
これは、企業はもちろん、国、政府などにも当てはまりますが、 特に日本ではデジタルトランスフォーメーションに関してリーダーシップを取ることができる人材が本当に欠如しています。
ただ、私自身は状況を比較的楽観視していまして、なぜなら、日本は成長するポテンシャルがあるからです。
60-70年代の経営者は学びを続け、成長を続けていました。そういったことを私たちはできていたのです。
そして、今、新たな成長のために、私たちは本当に勉強しなければならない時期に来ているように思います。
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