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特殊環境でのリーダーシップとチームマネージメント

April 12, 2021
航空自衛隊サイバーセキュリティ領域で幹部を務め、諸外国の軍隊とのやり取りの経験をもつ佐々木千尋氏をお招きし、リーダーインタビューを開催しました。自衛隊と海外軍隊のリーダーシップスタイルの違い、昨今の自衛隊組織におけるコミュニケーションスタイルの変化、強い個のなかでプレゼンス発揮するための工夫、自衛隊組織にいながら実践レベルでの英語力をどう維持向上しているのか、といったテーマでお話を伺いました。〈聞き手=ルイス・サントラム〉
photo: chihiro_sasaki

佐々木 千尋 - Chihiro Sasaki

航空自衛隊 二等空佐, Commander of Computer Security Evaluation Squadron
理工学修士。防衛大学校卒業後、航空自衛隊幹部として主に情報通信分野の経験を積む。統合幕僚監部において自衛隊のサイバーセキュリティ分野における諸外国との防衛協力業務を経て、現在は航空自衛隊のサイバーセキュリティを担うシステム監査隊の指揮官。イラク人道復興支援隊、航空総隊司令部では渉外担当官、通訳としても活躍。

Table of Contents:

  • 自己紹介
  • モチベーションの維持、責任、ゴールの設定
  • 女性としてのキャリア形成
  • 自衛官であり、母であること
  • 他の国の軍隊との仕事
  • 多国籍チームにおけるコミュニケーションについて
  • リーダーシップのスタイルについて
  • ※ 本記事は、英語インタビューの内容を元に、日本語にて読みやすく編集した内容となります。
    元の英語インタビューは、ページ上部の動画を再生してご覧ください。

自己紹介

- 早速ですが、簡単に自己紹介の方、よろしくお願いいたします。

みなさんこんにちは、佐々木千尋と申します。
航空自衛隊のサイバーセキュリティを担うシステム監査隊の指揮官をしており、 航空総隊司令部では渉外担当官、通訳としても任務を任せられています。
特殊環境においてリーダーシップを取り、組織マネージメントを業務として遂行しています。
また、結婚もしており、1児の母でもあります。

- どのようにしてそのようなポジションにつかれたのでしょうか?

私は子供の頃からリアリスト的な側面があったかと思います。
高校の時に進路に悩み、当時日本経済が非常によくない時期で、女性良い職業に就くということは非常に大変なことでした。
いろいろと迷いましたが、防衛大学校についての情報を耳にし、そこに入学したのがキャリアのきっかけです。
当時は大きな夢があったわけではありませんでしたが、堅実な道を選ぶつもりでこのキャリアを選択したのだと自分自身、記憶しています。
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モチベーションの維持、責任、ゴールの設定

- リーダーとしてのモチベーションの維持、新しいゴールの設定、責任についてお聞かせください。

最初は小さなゴール達成しやすい目標を立てて、それを達成するようにしています。
例えば昔、航空自衛隊での英語スピーチコンテストがあったのですが、私がそれにいざ、「出場する」となった時に非常に不安な気持ちになりましたが、 そのような経験をしたことで、私の英語の能力が向上しました。
そのようにプロセスを細分化して、小さなゴールを設定し、それを積み重ねることで、私はモチベーションを維持していますね。

女性としてのキャリア形成

- 女性としてキャリアを切り開いていく上で、何か困難に直面したことはありますか?

防衛省や自衛隊は今でこそ男女の区別がそこまでない組織となっていますが、やはり組織の中の割合としては、男性の方が多くなります。
そこにおいて、女性がどのような困難に直面しているのかということを理解してもらいづらいという側面はあると思いますし、 私の場合も、特に子供を産んでからの仕事というものには不安を感じていました。
しかし、数は少ないのですが、そういった経験をされている女性隊員の方などもいらっしゃったので、彼女たちから多くを学ばせてもらいました。

自衛官であり、母であること

- 自衛官であり、母でもあるということで、この二つを両立させる秘訣はなんでしょうか?

本当に両立できているかというと、自分ではわからないところもありますが、努力していますね。
ただ、がいろいろと助けてくれているということは一つ秘訣だということができると思います。
朝は私が娘を保育園に連れていくのですが、夜は夫が娘を迎えに行ってくれています。
仕事もそれに合わせて、朝早くは出勤していませんが、夜遅くまでは働くことができるようになりました。
以前の役職では、海外出張が非常に多かったため、夫への負担が非常に大きくなってしまいましたが、 その時は義母に頼んで、夫の家事や子育てを助けてもらっていましたね。

- なるほど。そのような母親としての経験が今の仕事に何か活かされていると感じていますか?

それは、多くの点でそう言えるかと思いますし、特に時間管理は上手になったと思います。
母親になる前は、できる限り精一杯仕事をしていましたが、娘を保育園に預けるようになってからは、 保育園が閉まる前までに娘を迎えにいかなければならないので、仕事を必ず定時に終わらせる必要がありました。
そういった経験から時間を管理することが上手になったと感じています。
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他の国の軍隊との仕事

- 他の国の軍隊と仕事をすることも多かったと思うのですが、そこでの経験を教えてください。

それぞれの国でリーダーシップの特徴というのは違いがありますね。
特に、アメリカ軍隊と仕事することが多かったのですが、 その時感じたこととしてはアメリカの組織運営における意思決定が、トップダウンで行われているのに対して、 日本ではボトムアップの組織運営がされているということです。
日本の場合は演習は訓練などを行う際、現場で何をするか決めて、 それを上司・上官に報告していくというプロセスとなりますが、 アメリカでは上官が意思決定をしてからその目標達成に向けて部下・スタッフが動くという図式になっています。
そのような構図で、私たち日本のチームが現場で意思決定をしようとすると、アメリカのチームと意見が食い違ってしまいます。
なぜなら彼らは上官の命令に従って動いているからです。
なので、アメリカ軍側に我々の意見を通すためには、日米のトップで一度話し合いを進めてから、 アメリカ側の上層部がそれで納得した後、それをアメリカの現場チームに伝えていき、 そこからようやく現場レベルで協力してもらえるというケースはよくありました。

- そうなのですね。現場レベルでなにか他に問題になったことはありますか?

言葉の壁によるコミュニケーションの問題はもちろんありました。
ただし、そこに来ているスタッフというのは、それぞれが何かの分野のスペシャリストです。
同じ分野のスペシャリスト同士では、その言葉の壁というのはそこまで大きな問題ではなく、 お互いに言葉が通じ合わなかったとしても、仕事を通じてお互いわかりあうことができていましたね。

- 他に驚いたことや、印象に残った国はありますか?

イスラエルは特に印象に残っています。
イスラエルでは18歳になると男女問わず、兵役に入る徴兵制を採用しており、男女問わず多くの兵隊を基地内で目にしていました。 また、イスラエルはサイバーセキュリティーが非常に強固なことが有名です。
ある日、若い女性兵士が我々に対してプレゼンテーションをしてくれたのですが、 彼女は非常にリラックスしていて、自信に満ち溢れ楽しそうにプレゼンをしていました。 こういったシーンは日本の航空自衛隊では決して見られなかったものでした。
日本では、例えば上官や先輩がそのプレゼンを見ていると思うとみんな緊張してしまいますよね。
例えば、今、私はオンライン上でみなさんにお話ししていますが、やはり緊張していると思います。
なので、その若いイスラエル人の彼女の堂々とした姿は今でも非常に私の記憶に鮮明に残っています。
またその理由を考えると、おそらく彼らは、話したり、意見を述べたりということを日常的にしているかと思います。
そういった環境方針により、そのような人材が生まれているのだと感じました。

多国籍チームにおけるコミュニケーションについて

- 国際的なチームにおいてコミュニケーションを取る上でどんなことを話していますか?

仕事やミッションのことについてももちろん話しますが、家族、スポーツ、食事など個人的な話もしています。
家族の話は基本的にどの国でも共通しているものがあるので、同意してもらったり、共感してもらいやすいトピックです。
スポーツや食事の話などはそれぞれの国でオリジナリティがあって盛り上がるトピックではないでしょうか。

リーダーシップのスタイルについて

- 千尋さん自身のリーダーシップのスタイルというのはどのようなものでしょうか?

私自身のリーダーシップについてお話しする前に、そもそも国による軍隊のリーダーシップと、民間企業のリーダーシップというものは少し違うかと思います。
民間企業におけるリーダーシップの役割は個人の成長を促すこと、つまり、それぞれの元々持っている能力を底上げするイメージです。
一方、我々のような軍・自衛隊として行っているリーダーシップは、各個人の能力の底上げはもちろんですが、 全体として個人が持っている能力のバランスが均一になるように調整していくことも必要とされています。
例えば、ある人が非常に高い能力を有していて、もう一方で、同じグループに非常に能力が低い人がいた際に、 我々のような組織では、能力の低い人の能力を高める一方で、能力の高い人の個性を抑えてもらうという調整をします。
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一つ、わかりやすい例がありますが、例えば映画のスターウォーズでは白いスーツをきた兵隊がいますが、 彼らは同じ白いスーツを着て、同じ歩き方で、同じ銃の持ち方をしています。
そして、そのような均一性達成することで、大きな力を発揮できていますね。
このような、チームを作っていくのが、軍や自衛隊などにおけるリーダーシップとなります。
その上で、私の所属するサイバーセキュリティー分野の部隊は、先ほど述べたような感じで、 みなさんが思っているような軍隊らしい部隊ではないかもしれません。
チームメンバーは比較的若く、非常に優秀な人材ばかりです。
なので、私の方から業務についての細かい指示などはしません。伝えているのはゴール理由のみです。
つまり、私がチームでしているリーダーシップは、目標に向かって仕事をしている彼らをサポートするということだけですね。

- すばらしいリーダーシップの形ですね!では、そのような独自のリーダーシップを築いていくには具体的にどうすればよいのでしょうか?

とにかく、トライアンドエラーの繰り返しですね。
私自身も自分のスタイルを確立するために、それを繰り返ましたし、今も同じです。
そうすることによって、独自のリーダーシップが形成されていくのではないでしょうか。
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